ある詩集を読んで/◇レキ
、詩は教えてくれるのです。…それが、何の救いにもならない。横目で僕のことを見る天日に干されているアジの開きのように。
しかし、向き合ってはくれないですが、同じ方を向いて、何の抵抗もなく、一緒に海や夜空を見てくれる、定年退職した無口な道化師のようでもあるのです。それはほんの小さな同情を寄せて。
詩が無ければ僕の心は、僕は等の昔に崩れて、霧散していた事でしょう。
詩は微熱の時、寝起きにそろりと飲むぬるいポカリのように、あるいは休日のよく晴れた昼間、木陰のベランダでペロリと飲む日本酒みたいにそっと体に馴染みます。
詩とはこの生きるという地獄を過ごす魂の、束の間の休息地でしょうか。
詩とは
真夜中薄ぼんやりした三日月の中
素っ裸で海で水浴びをしている人がいて
それを防波堤の端のテントから這い出て
生暖かい風を浴びながら
少し離れた所で
その無防備さの気配をそっと感じる事
でしょうか
そう言えば
つらくて、つらくて、
助けて!と叫んだら
詩は少しこちらを向いて、水塊のように崩れ去ってしまいました
僕は一人です
2018/9/10
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