一膳の箸へのオード/
帆場蔵人
箸よ、おまえは美しい
未熟な身体で生まれ
生死の境を漂っていたわたしが
ようよう生にしがみつき
お食い初めをしたという
小さな塗り箸よ
遺品整理をした
そのときに
うやうやしく
箪笥の奥に
仕舞われていた
一膳の箸よ
おまえは
記憶にもない
祖母との
絆の証しだ
わたしはおまえで
祖母の骨を拾ったのだ
箸よ、おまえは美しい
なにものよりも美しい
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