望/R
天井の向こうの
鮮やかになるしかない空に沈殿した
新月をじっと眺めていたら
心臓から水銀がとぷり
流れ落ちた。
とぷりとぷとぷ
とぷとぷぷつつと
畳にしみた。
あの日と似てて
全く違う
カラスはくゎっくゎっと電線に生きている。
今更な話
カラスになりたいってのだけは
本気だったんだ。
けれども私は
大人になるしかないから
誰も信じてくれなかったし
私も信じてはいなかった。
天井の向こうの
明日になるしかない空に埋葬された
新月は否応なく満ちてゆき
心臓から水銀がとぷり
流れ堕ちた。
とぷりとぷとぷ
とぷとぷぷつつと
畳にしみた。
あの日と似てて
全く違う
カラスは不可逆の空に生きて死ぬ。
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