どこかのレクイエム/ヒヤシンス
鏡に映る自分の立ち姿にあなたの面影を重ねる。
こんな秋の夜長には。
家中の時計が鳴り響く。
おまえは時を刻んでいればよいものを。
ポーの描いた大鴉か、リヒテルの奏でるラフマニノフか。
夜更けをほんのり過ぎた頃、私の頭は混乱する。
暗い暗号を解くカギはどこだ?
鏡に向かって白々しく笑って見せる。
あなたの面影が私を喰らおうとする。
見世物ではないのだ。笑え。
大きくて長い釘を私の心臓に打ち付けているもの。
私は生きた。あなたよりも永く。
鳥たちの声はもはや聴こえない。
物語も歌えない。
このまま夜が明けなければよい。
幸福は朝を描くが、不幸は朝を塗りつぶす。
聖歌隊の歌が聴こえる。
沈黙の中に祈りが見える。
涙は枯れたが、悲しくはない。
私の心臓には影がある。
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