箱のなかみ/服部 剛
君があまりに軽やかな足どりで
振り返る笑顔だけをのこして去ってからというもの
ふいに さびしくなり
しばらく忘れていた「 切なさ 」が
僕の体ごと ソーダ水の緑に染めあげて
炭酸の小さい泡が
ひりひりと体のふしぶしではじけている
南の風に吹かれてやってきた旅人よ
君の瞳の内に住む「 こども 」が
無意識に じっ とみつめると
ひとりでに胸に穴が空いてしまう
ソーダ水のはじける泡が
胸の穴からぴりぴりとこぼれぬよう
人さし指を穴に突っこんだまま ぼぉー っと立ち
君のいる遠い夜空を 見上げている
大人になるにつれて
「さびしさ」は少しはにかんだ表情で
い
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)