過去からの旅人/st
 
ささやくように

話しかけてくる

冬の足音


秋の終楽章の

フィナーレは

もう間近


木枯らしのような

冷たい風が

吹き抜け


舞い落ちた枯葉たちが

公園で戯れるころ


過去からの旅人が

やってくる


それは

ぼくのこころに住みついた


セピア色の彼方の

もう一人の自分


アルバムという

馬車にのり


時が止まったままの

写真を持って


色あせた 

約束の言葉を胸に


この公園を目指す



ぼくは

忘れてはいないけど



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