死と乙女---シューベルトを追悼して/st
 
死神が

美しい乙女に恋をした


死が近づいている乙女を

冥府に導こうと来たのだが


そのあまりの美しさに

恋に落ちたのだ


ところが 乙女はまだ自分に

死が近づいていることを知らない


乙女はある日 

鏡に映っている 自分のうしろに

死神がいることに気がつき驚く


(ああ 私はまだ若いのよ)

(残虐な死神よ 私に近づかないで)

(あっちへ あっちへ行って)

(私に触れないで)


死神は乙女に


(美しい乙女よ 恐れてはいけない)

(私はあなたの友なのだ)

(あなたに安らかな死
[次のページ]
戻る   Point(1)