南の信仰/春日線香
 
雀ほどの大きさの塊が手の中にある。線路に沿って歩くと片側がコンクリートで補強した斜面になり、さらに行くと竹藪の奥に家屋や井戸が打ち捨てられている。その先には登山道に続く道端に白い花の群生。あそこまで行く。あそこまでこの塊を持って行く。


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封筒には長い白髪の束と、古い紙幣が二千円分。表にも裏にも無記名。燃やすか流すかしたほうがいいのだろうができないでいる。


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塀の破れ目。ブロックの三つの穴が空を向いて、そのひとつにオロナミンCのビンが挿さっている。草むらから子供が飛び出してきてビンの口に指を突っ込む。これ
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