幽霊の感触―即興詩の試み/春日線香
 
ンのない一室があり、部屋の中がよく見える。家具はなくがらんとしている。住んでいない。決まって午後六時に明かりがついて、たぶん明け方まで。幽霊が幽霊の家具を使って幽霊の食べ物を食べている。というわけでもなく。


         * * *


時計は壊れる。時間が止まって水槽の中での生活が始まる。廊下の電気は長いことちかちかしているのでもうじき暗闇になるだろう。首に縄が巻きついている。野菜室では生ゴミが霜に覆われて干からびている。腕が空中で揺れる。足が空中で揺れる。


         * * *


犬の尻尾が空から垂れ下がって動いているのをなんとか捕まえた。抜けてし
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