幽霊の感触―即興詩の試み/春日線香
 
幽霊に触ったことがある、と話してその日は家に帰った。心の隅にざわざわと騒ぐものが現れて遅くまで眠れない。布団から起き出してコップに牛乳を注ぎ、壁の前で飲み干す。一人で暮らしている私の肩に触れる無数の干からびた手があり、その来歴を書き記さねばと思う。


         * * *


南瓜を切ろうと包丁をぐっと押し込んだ拍子に刃で指を叩いてしまう。幸いにも深い傷にはならずに絆創膏を貼ってことなきを得る。が、何日かはやはり不便だった。怪我をしていることを忘れてドアノブを握ったりして不意に痛みが蘇る。書く文字も虫のようになった。


         * * *


やり過ご
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