我が輩は畏怖である。/TAT
 
その日、節子が静江の家を訪ねたのは件の男の後日談を他所から仕入れたからだつた。まうこんなことはよしませうぐんさう殿と叫びながら小箱に詰められた野良黒のひぎゆあが投げ売りで売られていて、あらこれをおみひやげに買つてゆこうかしらんと節子は一瞬シンキングしたが、値がしたので止めた。
さうかうしながら都営地下鉄線の冥府七丁目駅から準急に乗つて那覇北駅で降りた。地下鉄を使ったのは無論、懐が寂しかつたからである。その後、那覇空港から香港、北京、新京、ナポリ、エジプトを経由し、機が盛岡に降り立つたのは、六日後の事である。一方その頃、盛岡駅東口のラツキヰジヨナサン盛岡駅前店でサラ番を打っていた静江の情夫、ジョニ
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