繭/春日線香
 
夜の街に赤い糸が絡みついている。ガソリンスタンドから交番へ、団地へ、駅へ、ことさら明るい信号の数々へ。死も生も絡め取るこの無尽の描線を爪弾いて、絶叫するものがある。絶叫するものがある。絶叫するものがある。赤い糸に包まれた街がさらに死に果てて生まれる場所に向けて、喉を破り尽くして絶叫する天蓋の下で、僕らは真っ赤に閉ざされた眠りを眠る。
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