台風の夜に/
春日線香
雨風が強いので窓を開けられないでいる。上がっていこうとする室温を扇風機の羽でかき混ぜて、今この時に頭上で輪を描く低気圧の巨大さを想像する。風が窓を揺らし、壁は思い出したようにぴしぴしと鳴る。冷蔵庫のドリンクホルダーに挿さった牛乳パックの底に、冷たく青い犬の目が沈んでいるのを私は知っている。かすかに揺れているのを知っている。
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