ラムネが欲しい/待針夢子
 
なんでかな
あの瞬間はきっと、今なのに

眼球の裏で羽虫が飛び回っている
右耳の後ろの脳が痛い 痛いんですー
固形の薬にはなんだかマイナスのイメージしかない
二番目に古い記憶のラムネ菓子とリンクしてるみたい
楽になる方法なんて千も承知で
でも多分一番自分を捨てなければいけないの
   (下らない矜持)
曝け出すことが寧ろスマートなのだとわかっている
   (しゅうあくな肉のかたまり)

二度目に来たときに
「ただいま」
奇跡のように言ってのけた あの子はもう
僕の首筋を暖かな雨で濡らさない

あの人から君に送られた帽子は
玄関の靴の下で泥にまみれていた

あの時から、違う、と
わかっていたのだけれど
 

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