街/AB(なかほど)
 
潮目


 県庁跡の建物の中で期待もなく調べ物にと
りかかり、時間を待って香林坊に出る。そこ
はほんのひとにぎりの銀座で、渋谷で、新宿
でもあり、池袋の匂いを探して片町に流れる。
スクランブル交差点では薄汚れたバドウェア
の上に、ボアの付いたコートを羽織った天使
たちが。また、その隙間からは彼女達のあこ
がれが目配せを、する。金劇の地下のかつて
茶屋から流れてきたお母さんたちは、またど
こかでどこかの花を咲かせているのだろうか。
犀川の手前では深呼吸もできはしないが、橋
を渡るともうここは歓楽街ではあありません
よ。と週末の静寂。身を委ねる場所は今日も
見つからない
[次のページ]
戻る   Point(11)