まだ見ぬキミよ/坂本瞳子
 
自覚がないというのは空恐ろしく
左の足を引き摺っていることも
左の目から流血していることも
認識していないと声高に謳う君の
声がボクに届くことはない
その右の小指は後もう少しで
天の縁に届きそうではあるけれども
触れたところで何も起きはしないさきっと
いっそのこと世界が歪んでしまえば
パンドラの匣も開いたかもしれない
貪欲な願いは尽きることなく
無限に広がる夢は翼を持たず
ただ堕ちてゆくことで積み重なる
責苦と嗚咽に苛まれながらも
そこはかとなく束の間は夢を見て
心を浮遊させて汚してみせる
悶絶する哀しみの末路を
思い浮かべて捩る下唇の
なんともいえないどす黒さよ
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