絆創膏と紙コップ/ホロウ・シカエルボク
 
ろはこの街にも一軒だけあったディスコの店員だったというバーテンは、和製グラム歌謡が流行っていたころにテレビでよく見かけたバンドのフロントマンによく似ていた。社交辞令的な挨拶を二言三言交わして、小さいが分厚いクッションのついた丸いスツールに腰を掛けた。バーボンに氷を浮かべてもらって、小さく流れているフレンチポップスを聴きながらぼんやりと飲んでいると、半時間ほどして一人の男が店に入って来た。俺より十は上だろうか。地味だが着心地の良さそうなスーツを着た、小柄なわりにがっちりとした体格は、柔道でもやっているのだろうかという印象をこちらに与えた。彼は俺の二つとなりの席に腰を下ろし、同じように紋切り型の会話を
[次のページ]
戻る   Point(1)