絆創膏と紙コップ/ホロウ・シカエルボク
 


 冴えない中年サラリーマンが、仕事帰りの屋台で誰に聞かせるともなく呟いている愚痴みたいな雨が、途切れることなく朝から降り続いた夏の夜だった。じめついた空気に我慢がならなくなって、眠るのを諦めて服を着替え、街に繰り出した。傘が必要なほどの雨ではなかったので、持って出なかった。ひどくなるようならコンビニに飛び込んで買えばいい。酒を飲むことしか楽しみがないこの田舎町の夜では、のんびり腰かけてコーヒーを飲むような店はまず見つけられない。家賃を浮かせるための、カウンターだけの狭い店が並ぶ飲み屋路地を歩いて、何度か飲んだことがあるバーのドアを潜った。まだ早い時間だったので、客は俺だけだった。若いころは
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