キリストとフクロウ/ホロウ・シカエルボク
 
。地面まで落ちてこないところを見ると、たいした降りではないのだろう。雷が一度鳴った。それが合図だった。俺は聖域に踏み込んで先を急いだ。身体が冷えて寒くなってきたことも理由のひとつだった。聖域を抜けるとそれまでのような荒れ果てた森に戻った。そしていままでよりもきつい傾斜があった。とにかくこの坂を上り切ることだろう、そう思った。不思議と疲れは感じなかった。目的に向かって進んでいるという気持ちが、身体を前へ前へと動かしていた。うっすらと霧がかかっていた。雨はもう止んだのだろうか。俺はここを歩きながら、ここではないどこかにいるような気がしていた。確かに息を切らしながらそこを歩いているのに、本当はもうまるで
[次のページ]
戻る   Point(1)