カメラロール群像/万願寺
 
はね、きちんと残っていますから。あなたは全部忘れたと思ってください。
でもきらきらだけは、遺っていますから。無数の死体のしたに、光の粉がすこし撒かれている。それを見逃す私たちではありませんから。
ようよう自分を捨ててください。ごみ箱は、網は、あなたの今までを、全部は捨てさせないのです。生まれ変わろうなんて無理。あなたはあなた。ここにのこった砂金のつぶが、あなたがいなくなっても遺ります。非常にうっとうしいお話だとは思うけれども、何もかもを失うことは人間にはゆるされない。かわいそうな人間。私たちはあなたのたくさんの取りこぼしを、しかるべき輝きで保存していますから。
前だけ見れば、つらいこともないはずです、あたりまえに後ろや下はあなたは見る必要がない。私たちの事を知る必要は無い。でも時々は電話をかけましょうか。過去はわらってあなたを懐かしみますよ。あなたはそれをどうか、わずらわしく思って。
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