ケン玉/……とある蛙
あの時代に街を彷徨う男は
夜の気配のする街角で
剣玉を所在なげに操る
夕暮れの街灯の下
足を組んで剣玉する男一人
街灯から降り注ぐ
まやかしの光の粒は
ぼーっとした色を男に与え
髪の中で虫を飼う
髪の毛の色は赤の碧
大きな白ぶちのサングラス
細身のズボンとハーフブーツ
およそ夕闇の街角には
似合わない剣玉
玉の色は緑で
奇妙に巧みな腕前で霊(たま)を捌く
降られた玉は宙を舞い
大皿小皿剣に収まる
だれに見せるわけもなく
玉が踊って宙を舞う
まるで何かに取り憑かれたように
辺りの闇から浮き上がって
霊が踊って宙を舞う
拡散しない光の粒に重
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