透明なナメクジと金の飾りに、骸骨のお姫さま/田中修子
 
で、ぽろぽろと罅割れた水晶のような涙がこぼれ出て、真っ赤な声でお姫さまをしかりつけることをやめられなくなりました。
 眉間には皺がより、顔はけわしくなります。領主は盤上の遊戯の合間、無邪気に奥方の皺を囃し立てます。
 城にあるすべての鏡は閉じられてしまいました。
 お姫さまにはばあやを付き添わせ、どこに出しても恥ずかしくないように、踊りに提琴や、剣術に外国のことば、領主の盤上の遊戯の習い事もさせ、あらゆる美しい本を買って与え、ともかく遠ざけようとしました。それでも、城のなかで通りすがるときなど、お姫さまは、
「おかあさま」
と巣をもとめる小鳥のようにかけよってきますし、奥方は、硝子にきら
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