日蝕/為平 澪
腕には 花の痕
ぬるくなった前頭葉から 真昼が滴り
効き目のないエアコンの風が
指先を 揺らしている
デコルテの青白い呼吸が 唇から漏れる
白熱灯の陰り 閉ざした瞼から
上手に笑う あなたが潜む
(ひらきなさい。怖れてはならない。
二度目に死ぬことも。)
空から降ってくる太陽の重さと熱さを
女の水だけで蒸発させる 宴が繰り返される
鏡が 私を吸い込み 奪い続け
肉体の輪郭は溶けて フラスコを濁してゆく
実験は繰り返され 私の眼は
アルコールランプの炎に 投げ込まれたまま
燃え続けている
夜 ちぎれた声 途切れて 聞こえる
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