ちいさなちいさなことばたち/田中修子
つい語らいに当てられ
わたしは冷えてしまった
わたしにはひとり穿ちつづけた
透きとおった氷山のトンネルがある
氷山を、海を、浜を
庭を、一輪の花を
恥じらいながら
もくもくと探検していた
おとなたちもいるときく
あなたのみた
すばらしいひとりの風景を
わたしは聞きたい
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「皿洗い」
涙をぬぐうように
お皿を洗った
傷をふさぐように
やわらかい布でお皿をふいた
お皿は
ほのかにあたたかくて
キュッキュと鳴った
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「浮かぶ骨」
青い赤い金のピンクの
息飲むような夕暮れに
いまだ怯え泣く
木に逃げ遅れた友が家
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