ちいさなちいさなことばたち/田中修子
「錯乱」
しをかくひとは
胸や、胴体に肢体、に
まっくらな、まっくらな
あなが、ありまして
のぞきこむのが
すきなのです
のぞくとき、
のぞきかえされていて、
くらいあなからうまれますよ
母や父や人魚のなみだや
星のうく夜を
さんらん
します
あなた
「花よ咲け鳥よ飛べ」
体を引きちぎりたい
にくしみも
うらみも
かなしみも
生きておればこそ
死んじまったあの子らの
想い出を
背負ってゆけるのも
生きておればこそ
死にたいのも
生きておればこそ
いつか
叫びつづけ流しつづけた
悲鳴は涙は
火が虫が
地に返
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