時代の鐘/ヒヤシンス
時代という鐘がなって、僕は生まれた。
コンクリートで固められた部屋には窓がひとつあって、そこから海が見えた。
そこには髪の長い女の子がいて、自然と二人並んで海を見ていた。
海の音も風の音も聞こえなかった。
僕は優しさを知っていたが、彼女は愛を知っていた。
僕はきっと前世で誰かに優しくされたのだ。
彼女はきっと前世で誰かに愛されていたのだ。
僕らはお互い貧富の差があって、時代の鐘と共に死んだのだ。
二人が身に着けているものは、貧しい布切れ一枚。
足には鎖が巻かれていて、重たい錘が付いている。
僕も彼女も前世で誰かを殺したのだ。優しさ故に。愛故に。
目の玉が反転して僕の幻覚は終わった。
いつもの平凡な暮らしが目の前にあった。
僕が幻覚を見るたびに、時代の鐘がなるだろう。
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