にがい いたみ/田中修子
 
乱れ散る言葉らに真白く手まねきされる

祖母の真珠の首飾り
 記憶の そこ 瞼のうらの
  螺旋階段を 一歩ずつ 一歩ずつ くだる
   (そこで みた おそろしいことは 忘れます)
    コツ コツ コツ ルビーの靴 黄色い煉瓦をふみ
     バッヘルベルのカノン
      幾度も乱反射する
       蓮華の花言葉と 式子内親王が
        「 玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらへば 」
         (三、二、一) しろい へや
          狭い窓 夏の夕暮は大火
         赤い雲の けむに まかれた
        いちばん そこ
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