鍵っ子/為平 澪
両親から持たされて鞄の奥に仕舞っていた
親の言いつけだったのか
知り合いの噂話だったのか
人目には触れさせなかった、その鍵。
納戸の勝手口には突っ張り棒がしてあり
玄関口は内側からしか開けられない
何のための鍵であったかわからなかったが
この家の一番奥の仏壇の前の床の間へ
行くものだったのか
あるいは その手前の一人きりしか入れない
狭い部屋に続くものだったのか
わからない、鍵。
私は親の言いつけを守る子だった
バスが決められた時刻に決められた場所を
通過していくような
電車がスピードを落とすことなく目的地を
目指すような
両親と私をつなぐ鍵付きの私を
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