運河の先に/藤鈴呼
 


バニラの香りのするティッシュひとつまみ
鼻先をくすぐる乙女心を思い出せば
不摂生の祟った吹き出物ひとつ見つかる
忘れてしまった風な喉の痛みから出たイガイガ
足先から離れないイボのような不具合さ

ツラツラと綴る心の四方山話
何処かの井戸に落とした戯言
紐伝いに引きずり上げれば干からびた溜息
誰にも響かぬと空を見上げていた黒猫の鼾

頬を撫でる風そよぐ春を感じたのは
黄色のシロツメクサと勘違いしたからで
其れが蒲公英と言う名前なのと知った処で
最早代わるものなど何も必要ないかのよう

音の霞から浮き上がる閃き
門構えから伸びる松の切っ先
真っ先に伸ばす指先
二度と届かぬ囁き

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