夏電車にて/
藤山 誠
景色はぼやけてはっきりせず、
もう夕方なのにこの電車から降りれないでいる。
手の中で蝉の抜け殻がクシャクシャと潰れて、
自電車ごと川に落ちる。
そうめんはどろどろに伸びていて、
五百円玉からは金属の匂いがする。
だれもいない公園とくだらない図書館と、
今じゃない祖父の家。
大人はとても楽しい。
父は老けてく。
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