午睡/ヒヤシンス
 
イスティーを飲んだ。

  今日はね、何にもない日なんだ。何もね。
  だからお前といる。一日お前といられる。
  暑くはないかい?白い肌が日焼けしちゃうぜ。 
  その帽子、お前によく似合ってるよ。

 私はアイスティーを啜りながら、読みかけの本を読んでいる。
 私はお前の病気を理解したかったのだ。
 「精神世界の闇と光」
 よくは分からなかった。

  そういえば、明後日はお前の誕生日だね。
  お互い歳をとってゆくばかりだな。
  プレゼントは何が良いんだろうな?
  二人きり、ケーキでも食べようか。

 気が付けば、日は暮れかかっていた。
 外気が次第に冷たくなってゆく。
 静かに本を閉じ、思い切り深呼吸した。
 むせるような緑の匂いが鼻についた。
 庭の向こうの林から蜩の微かな声が聞こえてくる。
 目の前に座っているはずのお前はいなかった。
 ただお前の麦藁帽子だけが籐椅子に置かれている。

  お前は夢を見ているのか。
  いや、私は静かに現実を見つめている。 

 
 
 
 
 
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