侵食と同化/「某日」に寄せて/いとう
にして
という何気ないフレーズに集約されていて、
また、前述の不器用な姿の裏付けにもなっている。
(器用にやりすごせるのなら、このような苦痛は発生しない)
この連に含まれる話者の心情を汲み取ることができなければ、
この作品の本質は見えない。
「作為」についてもう少し。
「シジミ」での同化は「口をあけて」で示されている。
話者はシジミと同様に「口をあけて」寝ることで、
シジミとの同化が果たされている。
もちろんこの同化は侵食への抵抗として行われるものではなく、
そこに“作為”は存在しない。
「寝るよりほかに私の夜はなかった。」という最終行は、
「私にはそれしか残されていない」という意味を含み、
「意志・作為」よりも、そうせざるを得ない「状況」がある。
「意志を以って作為として進まざるを得ない同化」と、
「状況としてそれしか許されない同化」。
どちらがより不幸であるのか、私にはわからない。
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