闇坂/湯煙
 


寺の門前の傍には真四角の煎餅板の上で、猫が前肢を揃え、こくり、こくり、睡っていた。ゆるやかな石段の続く、石垣作りの坂のたもとにたどり着けば、遊歩道をはさみ南北に伸びる国道が待つ。散策や墓参りに訪れる人々を横目に猫はいつもふさふさと、薄茶の毛が軽やかに白に戯れていた。ふくよかに張る首筋を撫で上げれば物欲しげな声をあげた。こくり、こくり、気だるく頭を垂れていた。

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うららかな晩秋の昼下がり。私はカメラを手に嬉々として無心の時を過ごした。一回り小さく機動性に富む、世に出てまもないカメラ。片手によるスナップも行えるほど軽量な作りをした、ブラックボディの、初めて扱うMF一眼レフカメ
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