海街/ヒヤシンス
さっきまで明るかった空が暮れてゆく。
家路へと急ぐ人達に紛れ込み、今日も一日が終わろうとしている。
暗がりの中、明かりが灯された電車の中で私は孤独だった。
誰かと話したい訳ではなかった。
気の変わる人達に疲れていた。
もしかしたら自分も?
鬱々とした気持ちで車外の風景を眺めていた。
刻々と変わる風景に何故だか心がざわついた。
新鮮な空気が必要だ。
突然眩暈と吐き気に襲われて次の駅で電車を降りた。
ベンチに座り深呼吸すると仄かに海の匂いがした。
森が好きなはずなのに悲しくなると海を見たくなる。
湧き上がる懐かしさの中で足元が濡れていた。
元居た場所に帰りたくはなかった。
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