いとおしさ/小川麻由美
 
陽光に花びらが透ける
いずれかの方向から来る花の香り
比較的晴れた日の出来事
雨の日といえば
水たまりの数々の輪
雨音という楽器の音に耳をそばだてる
曇がもたらす
色の変化 ふたつとない形に見入る
雪の白 雪の無数の結晶
穏やかな天候はなぐさめてくれる

これは ひとつしかないんだよ
これは 今しかないんだよ
これは はかないんだよ

何かが囁くように告げる

あなたの横顔
あなたはたったひとりだと教えてくれる


感情のメーターが動きを示す
切ない喜びにあふれる
日常が神々しく思えるが
日常に変わりはないという驚き
いとおしきものは日常に無限に在る
そう思えた瞬間 
いとおしい
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