白い小舟/オキ
О
その病院は川のほとりにあって、少女の入院している病室の窓から、河口の様子がよく見えた。河口に近い岸には、小舟が何艘も?留されていた。そのうちの一艘の白い小舟を、少女はことのほか愛していた。小舟自体は白いのだが、誰にも構って貰えなくて、とても汚れて見えた。
「あのお舟をきれいに洗ってあげたいわ」
少女は窓から小舟を見る度に、そう思っていた。
「私が退院したら、あの舟のところに行って、バケツで水をすくって、かけてあげるの。何杯水をかけたら、きれいになるかしら」
そんなことを考えて日を送っているうちに、大きな嵐がやって来た。嵐は大雨を降らせた。窓から覗いても、雨で外は見えなか
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