束の間の/ハァモニィベル
束の間の輝きが水面に射すと
魚は 眠らない営みにリラリラと
言葉を浮かべ
手に取ろうと揺らめく影を砕いて
その光の枠を抜け出したまま
ほんの夏の終わりの方まで滑ってゆく。
凛とした濃い流れに乗ったまま
あなたの記憶だけ細く何処までもまだ泣いていて
ひと雫の出来事は 琥珀色の川底で
粒のような砂の風に舞いながら フッと思い出すように揺らめく
鋼色の分厚いカーテンは何時しかそよぎ
薄く削がれた現実の切片を
狭く暗い舞台の上に大きく映し出す
その度に、左目で覗きながら右目で写生しつづける
永遠のように静かで、美し
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