束の間の/ハァモニィベル
 
束の間の輝きが水面に射すと

魚は 眠らない営みにリラリラと

言葉を浮かべ

手に取ろうと揺らめく影を砕いて

その光の枠を抜け出したまま

ほんの夏の終わりの方まで滑ってゆく。


凛とした濃い流れに乗ったまま

あなたの記憶だけ細く何処までもまだ泣いていて

ひと雫の出来事は 琥珀色の川底で

粒のような砂の風に舞いながら フッと思い出すように揺らめく


鋼色の分厚いカーテンは何時しかそよぎ

薄く削がれた現実の切片を

狭く暗い舞台の上に大きく映し出す

その度に、左目で覗きながら右目で写生しつづける

永遠のように静かで、美し
[次のページ]
戻る   Point(5)