幸福〜晩春の朝に/ヒヤシンス
桜舞い散る晩春の朝だ。
風は未だ冷たく、貴女の頬を赤く染める。
故郷の庭では椿が咲き誇る。
ストーブの上ではやかんが湯気を吹いている。
頬を染めた貴女はいつしか私の手を握る。
貴女の熱が私を温める。
炬燵の中から猫が顔を出してそれを見ている。
仏壇の前で線香をあげていた義母もこちらを覗き微笑んでいる。
幸せは今ここにある。
人生嫌な事ばかりじゃない。
愛と優しさが小さな部屋に満ちていた。
透き通った風が淡く広がる風景に沁み込んでゆく。
私の肩に頭を寄せた貴女は美しかった。
晩春の朝に桜は静かに舞っている。
戻る 編 削 Point(4)