茶摘み歌/オキ
∇茶摘み歌 服だぶだぶの 少女かな
入院した母の代わりに、少女が母の着ていた茶摘みの支度をして、茶摘みに精を出している。
スピーカーからは、村中に茶摘みの歌が流れている。
♪ 夏も近づく 八十八夜
♪ 野にも山にも、若葉が茂る
♪ あれに見えるは 茶摘みじゃないか
少女の口も開いて、歌を口ずさんでいるようだ。
空では、ヒバリが囀っている。
茶摘み歌と競うわけでもないのだろうが、ヒバリの声も、かまびすしいばかりに盛んだ。
思わず少女は顔を上げて、ヒバリの姿を探した。太陽が眩しく、ヒバリは見えない。一瞬光ったように見えたのは、ヒバリの嘴に反射した陽の光だと分った。
∇
戻る 編 削 Point(1)