扉/草野大悟2
 
 青鷺は、一声鳴いて、大きな翼で空をたたいた。翼のひとたたきで、番人の本来あるべき位置にもどったとき、「二人とみんな」の姿は見えなくなっていた。
 茜色になった風が、吹いてきた。
 番人は、口を大きく開けて風を呑み込んだ。
 風は、番人の体の中を吹き、青をより鮮やかに染めた。
 「二人とみんな」は、呑み込まれそうになりながら、扉を目指していた。赤が風を見つめながらハミングをした。赤紫と空色と黄も続いてハミングした。それは、カノンだった。
 重層的に奏でられるメロディが、茜色の風に乗って世界中に流れた。
 外の生き物たちが動きを止めた。人間も車の運転を辞め、耳を傾けた。静寂の中にカノンは
[次のページ]
戻る   Point(2)