ガルシアの首/zitensha
ガルシアの首が落ちた
真っ赤な鮮血が暗い物陰の魂に降りかかり
闇の雫が夜中の台所の蛇口から一滴一滴、滴り落ちた
おお、ガルシア
切り落とされた生首
たった一本、床に落ちる針が震えるような夜になることがある
鏡が砕けてその破片が数千に散らばった
そうして数千の世界を映し出した鏡は数千の孤独を産んだ
魂の午前二時に不眠の夜はやってくる
全盲の眼を持つ夜
ガルシアの生首に光る眼
その眼はありとあらゆる世界を見尽くしてきた
ペテルブルクの冬から灼熱のカルカッタまで
闇という闇を見尽くし光という光を拒絶した
黒い蝙蝠傘を持つ男の悲哀
カミソリの上でゆっくりと蛞蝓
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