木の芽どきのソネット/佐々宝砂
 
それは気の迷いだろうどっちかというと
と書き込みたい気持ちを抑えて眺める
空が青くて明るすぎるので私はすっかり腹を立て
こども部屋の真ん中に黒のクレヨンで魔法陣を書く

逆さの五芒星の真ん中にやにや笑いが落ちてきて
VTuberになってみたいなどとアホを言うからぶん殴る
悪魔もぜんぜん役にたたない三月の窓辺は輝かしいが
これが散文でない証拠について考察する薄雲は退屈で

庭のさくらんぼの樹はもうすっかり葉桜で
その根元には私が殺した死体がいっぱい
なんというお決まりのつまらないありきたりな

それは気の迷いだろうどっちかというと
と書き込んでも真実は真実のまま私の庭に眠り
悪魔は私の書棚にあるしょうもない本を読み耽る
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