「欲望」という甘い罠/本城希望
僕はいつの間にか「欲望」という
一度足を踏み入れたら
二度と出られない
甘い汁の中に身を委ねきっていた
そこはかとなく溢れ出る
「欲望」の渦の中に身を投じるのは
あまりにも簡単な事だった
容易い事だった
故にここから抜け出したいと
思った時の事を思うと僕は恐ろしい
何故ならそれは当然不可能な事だから
もう社会の中で
生きてゆけなくなったこの体は
一生この甘い汁の中で呼吸を繰り返し
そして息絶えてゆくのだ
まだ綺麗な心を持ち合わせていた
幼き日々の夢を思い出しながら
静かにそして孤独に・・・
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