プロメーテウスのおバカさん/佐々宝砂
火を盗ってきたから
ここで炎が燃えているのだと
プロメーテウスは言うのだけれど
プロメーテウスはおバカさんだから
火から離れて星を見ている
もちろん星はたいてい火なのだけれど
そうじゃない星もあるけどそれはさておき
とりあえず星はとっても遠い
遠い火
近い火
火にもいろいろあるけれど
プロメーテウスのおバカさんは
遠い火が好き
手に入らない火が好き
がんばらないと手に入らない火が好き
プロメーテウスのおバカさんはきっと知らない
私たちにごく近いところで
いえ私の内部で
火が燃え盛っていることを知らない
生まれたばかりのほかほかの赤ん坊でなくても
なにか知り染めたばかりの若いのでなくても
熱意などなくても
ここにはいつも火がある
私たちの細胞は常に
私たちが生きている限り燃え続け
プロメーテウスのおバカさんは星を見る
私だって
火の番をしなくていいなら星を見る
戻る 編 削 Point(7)