プロメーテウスのおバカさん/佐々宝砂
 
火を盗ってきたから
ここで炎が燃えているのだと
プロメーテウスは言うのだけれど
プロメーテウスはおバカさんだから
火から離れて星を見ている

もちろん星はたいてい火なのだけれど
そうじゃない星もあるけどそれはさておき
とりあえず星はとっても遠い

遠い火
近い火
火にもいろいろあるけれど

プロメーテウスのおバカさんは
遠い火が好き
手に入らない火が好き
がんばらないと手に入らない火が好き

プロメーテウスのおバカさんはきっと知らない
私たちにごく近いところで
いえ私の内部で
火が燃え盛っていることを知らない

生まれたばかりのほかほかの赤ん坊でなくても
なにか知り染めたばかりの若いのでなくても
熱意などなくても

ここにはいつも火がある
私たちの細胞は常に
私たちが生きている限り燃え続け
プロメーテウスのおバカさんは星を見る

私だって
火の番をしなくていいなら星を見る
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