海/鷲田
海には白い波と澱んだ茶色の水中の飛沫がある
俺は鎌倉に一つ欠伸をした
都市は眠りに付いている
生活者にとっては好都合だ
週末の大手町に流れる旋律には音が無かった
響きも無かった
記憶だけが脳裏の声を覚ます
嫌な記憶だ
だが、それは快楽にもなり得る
そしてなんと言っても金になり得る
私の選んだ主義は資本だった
それは今日も地下鉄に揺られる婦人と同じ主義だ
満員電車に押し込まれる正常者の
目指すビルと同じだ
描かれる世界が社会を掻き消す
時刻
12の数値を僅かに廻る
冬の景色に差し込む陽光
差別主義者が忘却する風
つまり、人類が感じる彼方
雲がはっきりと
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