断片/鷲田
1
歩いている橋の下を流れる川は澱んでいる
ぬかるんだ川の底では水の香りは土の茶色に掻き消され色彩を失う
透明な景色を一体どこで見ただろう
眼に見えた草の形は項垂れていて 写真には真っ直ぐに伸びた樹が映っていた
橋の上から見える街並みに浮かぶ一つの雲
真っ白な記憶は今や鈍感に犯されている
沈殿よ お前はそのまま行くのか
2
世界を流れる数多の感情が出した答えは単純である
水面に落ちた市場の石が流転して世界を飛び回る
特別な想い出はどこかにしまわれ、スクリーンに映る数字が全てを表わす
電車はゴトゴトと日常を奏で、人間の生活が溢れる
神経質な一つの欠片が不協和音を奏でる
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