子守唄/服部 剛
風呂で溺れた
ダウン症児の周ちゃんが
救急車で運ばれ
一命を取り留めた
子供病院
入院後の回復は順調で
3日後に人工呼吸器は外れ
ゆっくりと目を覚ました
日が暮れて、パパは
スーツ姿で面会にゆき
ベッド柵に囲まれた
周ちゃんは
今夜も寝つけず
昨日ママが、家から持ってきた
歌の玩具のボタンを押すと
静まり返った病室に
バッハのアリアは流れ出す
300年前の
遠い異国の御魂(みたま)は
メロディとなり
時を越え
幼い胸へ流れる
小さな耳をぴくり、傾ける
我が子を
ベッドの傍らで見守りながら
(不滅なもの)を想う
子供病院
消灯の時刻
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