◎裸身/由木名緒美
 
山際に故郷を茂らせて
霧立つ河は唱和する
悠久の径を手引くように
水面には明かりの灯った小さな神輿が流れ
その一つ一つに幼子が蹲っている
名付けられた世界を知らず
生誕の由縁も語れぬまま
もの問いたげなその眸(ひとみ)は
真っ白な悟りの布を産着にしつらえて
すべらかな肌にまとっている

今朝 轢殺された一匹の猫が
ゆきずりの弔い人に葬られるまで
ひしゃげた亡骸は惜しむように路辺を駆ける
日向を食む恒温動物も 岩肌のような爬虫類も
朝陽を浴びれば天を仰ぐ
地平線は命の系譜に沿って隆起していくのだ

赤い唇の錦鯉が
油蝉を誘惑する
あなたが私と
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