フラワー・オブ・ロマンス/もとこ
 
アタシに初めて薔薇が咲いたのは
十二歳の冬の日だった
ひとつ、ふたつとこぼれ落ちる
目が痛くなるような赤い薔薇
そのことをママに告げると
彼女は「やあねぇ」と眉をひそめた
それは悪い魔女の呪文のように
アタシの中に苦痛を刻んだ

それから薔薇が咲くたびに
アタシは棘の痛みに苦しんだ
図書室の本には薔薇の花が
気高く尊いと書いてあったのに
アタシを産んだママも
アタシを抱く男たちも
誰も薔薇を喜ばない
かわいそうな薔薇
役立たずの薔薇
薔薇はアタシ
無意味なアタシ

だからアタシは薔薇を憎んだ
アタシの薔薇を否定する
すべての人たちも憎んだ
そして今こ
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