茶柱/宮内緑
 
娘はまだちいさい
ちかごろ茶柱というものをしって
家族のため、お茶をよく淹れるようになった
茶柱はなかなか立たない
というより、一度もみたことがない

ときには夢中になって
湯呑みと急須で湯をいったりきたりさせる
それで父が席に着くころには
すっかり猫舌のためのお茶に仕上がっている

今日は傍でそんな娘の手ほどきを見ている
父はそのうち我慢ならなくなって
急須からなにかを摘みあげ
こうしちゃえと湯呑みに落とす
ああ、と娘は声をあげる

沈んでいく茶殻を見守りながら
やっぱりずるしたから駄目なんだと
娘は父を責める
といいつつ、娘も我慢ならなくなって
父の真
[次のページ]
戻る   Point(7)