茶柱/宮内緑
娘はまだちいさい
ちかごろ茶柱というものをしって
家族のため、お茶をよく淹れるようになった
茶柱はなかなか立たない
というより、一度もみたことがない
ときには夢中になって
湯呑みと急須で湯をいったりきたりさせる
それで父が席に着くころには
すっかり猫舌のためのお茶に仕上がっている
今日は傍でそんな娘の手ほどきを見ている
父はそのうち我慢ならなくなって
急須からなにかを摘みあげ
こうしちゃえと湯呑みに落とす
ああ、と娘は声をあげる
沈んでいく茶殻を見守りながら
やっぱりずるしたから駄目なんだと
娘は父を責める
といいつつ、娘も我慢ならなくなって
父の真
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